若手理学療法士の賢くん、臨床にも少し余裕がでてきたのでそろそろ研究をしてみたいと考えていました。しかし、研究にはまったく触れたことがなく、何から始めてよいか想像もつきません。それでも胸に秘めた情熱は本物であり、賢くんは神奈川県理学療法士学会での発表を目標として臨床研究をしようと堅く心に誓いました。先輩の甲斐さんから研究テーマに関する提案をされましたが、誰かの指図で動くのは苦手という不器用な賢くん、「自分のやりたいことを見つけます!(心の叫び:自分で決めたことじゃなきゃやりたくないやい!)」と大口を叩いてしまいました。ところが1週間後、研究を開始しているどころかテーマの決め方さえ分からず、いきなりスランプに陥っていました・・・。落ち込んでいる賢くんに甲斐さんは優しく手を差し伸べました。
A) そんな賢くんの思いに共感したあなたは「学会発表をしたい!・・・だけど何をすればいいの?」へ
賢くんは臨床疑問を発見しようと、新しいメガネまで購入しやる気満々です。そんな時、人工股関節術後のアンドリューさんを担当しました。その方は術前よりフォローしておりましたが、術後3週間が経過した今も、以前の歩行速度を取り戻せずにいました。賢くんは考えていました。「アンドリューさんは歩行周期を通して足の回転(ケイデンス)は早いけど、股関節の動きが硬くて歩幅が伸びていないな。10mを30歩もかけて歩いている・・・。そうだ、歩幅を広げるような介入をしてみよう!まずはゆっくりでもいいから10mを15歩で歩く練習をしてみよう!」
「よし、テーマが決まりました!僕は今担当しているアンドリューさんの歩行速度向上に対する介入効果について検討したいと思います!」と甲斐さんに宣言した賢くん。根が単純なので、すぐに自信を取り戻せたようです。さて、見事に臨床疑問を発見しテーマが決まった賢くん。意気揚々としているところへ甲斐さんの一言「で、介入効果ってどう検討するの?」。ブルーの太ぶちメガネの奥で、再び身も心もフリーズする賢くんでした。
B) そんな賢くんの思いに共感したあなたは「研究が初めてなのですが、どうやって進めていけばいいでしょうか。」へ
甲斐さんと共に研究計画書を書き始めた賢くん、アンドリューさんの歩行速度向上に対する介入効果の検討についての研究計画が着実に進んでいます。プライマリーアウトカムは最大歩行速度と設定し、研究デザインはABデザインを使用することにしました。ベースラインのデータを5日間計測した結果、歩行速度のばらつきは少なく、ある程度安定している結果が得られました。そこで、賢くんの考えたアプローチ「10mを15歩で歩こう大作戦」を実行に移しました。「そのネーミングセンスはいけてないよ」と心から思う甲斐さんでしたが、「経過が楽しみだね」と優しく声をかけました。
StepⅠの終わりに
繰り返しになりますが、臨床研究の目的は「臨床で生じた疑問を解決する」ことです。ケーススタディはたった一例の報告です。しかし、その一発表が蓄積されることで大きなエビデンスを生み出すことができるのです。まさに、「あなたの参加で変わる神奈川の未来」、今あなたがその一歩を踏み出すことができた時、このナビゲーションシステムは本懐を遂げることができます。この度はStepⅠの最後まで読んでいただきありがとうございました。是非、みなさまが各々の臨床現場で、研究を実行に移されることを願っております。