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アドバイス STEPⅡ

掲載日:2014/09/03

抄録の書き方

抄録(アブストラクト)とは記事内容の概略を迅速に把握する目的で作られた文章で、記事の重要な内容を簡潔かつ正確に記述したものを言います。聴衆にとって抄録の内容はあなたの発表を聴きたいと思わせるかどうか判断する基準として大きな部分を占めると言えます。そのため、必要な内容を整然とまとめる作業は重要となります。文字数に関しては演題募集要項を確認して頂きたいところですが、最初から文字数にとらわれる必要はなく、まず一通り書き上げてから重要度の低い部分を削るようにしましょう。

 

 

金川賢くんの抄録を例に抄録を書く際のポイントについて解説します。

 

タイトル:タイトルは見出しであり、聴衆者にとって理解しやすいこと、研究の内容を的確に表現したものであることが重要となります。決められた字数内で簡潔、興味を引くもの、研究デザインを示すこと、キーワードで始まること、文法的に誤りがないことがポイントです。

 

背景:背景は臨床的疑問とその意義を明確にすることが重要となります。過去の文献も引用できるとより厚みのある研究となりますが、あまり難しく考えずに、あなたと臨床疑問との出会いの経緯を素直に記載できれば良いと思います。今回,注目したテーマをなぜ重要と感じ、どのように興味深かったのかを説明します。また、新しい言葉やあまり馴染みの無い用語は、この段階で定義付けをすると良いでしょう。

 

目的:背景を通して導きだした目的は今回のケーススタディで強調したい点となります。タイトルと目的はリンクするものですから、同様のキーワードを取り入れ、簡潔に述べましょう。

 

症例および初期評価:対象とした症例の情報、経過について述べていきます。特に、報告のポイントとして難渋した症例であったり、珍しい症例であったりした場合には注目してほしい情報を簡潔に述べていきましょう。これは臨床で施設間連絡票を作成する時のイメージと同様です。

 

方法:方法ではどのようにデータを取り、どのように比較検討したのかを記載します。研究デザイン、介入方法が聴衆者(客観的)にもわかるように情報を順序立てて記載しましょう。記載できるのであれば統計学的分析方法も入れます。

 

結果:結果は結果だけを記載し、決して考察を絡ませないことが明快かつ引き締まった文章を書くポイントです。本学会の抄録に表や図は掲載できませんが、本症例の結果はstepⅠの図2Bをイメージしたものです。

 

考察:考察の記載は、結果をもとに論理的に自分の考えを相手に伝える場となります。その結果を「良い」と判断するのか「悪い」と判断するのかはあなた自身です。記載の順序はまず最も重要な内容から、つまり背景となった臨床疑問に、その研究結果がどう答えたかを考えます。また、可能であれば今回のケースと先行研究との結果を比較して、自分の研究で得られた新しい情報が何であるかを考えたりもします。過去の文献を参考にする事が出来れば自分の考えを主観でなく、より論理的に説明することができます。そして、何よりも大切な事は臨床的意義と結びつける事です。飛躍し過ぎた推論は科学性に欠けてしまいますが、結果について周囲と議論するのも楽しい時間となるかもしれません。臨床現場で働く理学療法士に持ち帰ってもらいたいメッセージ(Take home message)を伝えましょう。

 

結論:結論は、その字の通りに「結果を述べる」場です。したがって、その研究で何が最も重要な知見であったかを明快に述べることと、研究結果から何が推奨されるのかを明確に述べることとなります。振り返ってみて、タイトル、目的、結論が対応していることは重要なポイントであり、何度も読み返して確認してみてください。

 

佐藤らはケーススタディ抄録作成の構成要素8として以下の4つを挙げています。各構成要素をそれぞれ文章化し、つなぎ合わせるだけでも抄録らしくなると思います。本文では4つの構成要素よりもさらに細分化して説明していますが、再度以下の4つがしっかり述べられているか確認してみてください。

    症例データ

    過去の文献データ

    今回の報告のポイント

    エビデンスとしてどのように役立つか

 

 

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